大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪家庭裁判所 昭和39年(家)3227号 審判

国籍 ドイツ 住所 兵庫県芦屋市

申立人 レイ・ゲイツケル(仮名)

本籍ならびに最後の住所 大阪市

被相続人 亡山本直人(仮名)

主文

被相続人亡山本直人の相続財産である

大阪市○区内○○町二丁目二八番地の七

一、宅地 二五坪三合八勺

同所同番地上 家屋番号同町九九番

一、木造瓦葺二階建居宅一棟

床面積一階一四坪七合五勺

二階一二坪五合〇勺

附属建物

木造瓦葺平家建物置 一棟

床面積 一坪二合〇勺

の換価金二四〇万円のうち金二一五万八九〇〇円を申立人に与える。

理由

本件調査の結果によると次の事実が認められる。

被相続人亡山本直人は、住所地において昭和三七年七月二三日死亡したが、同人には直系卑属はなく、妻、直系尊属、兄弟姉妹はいずれもすでに死亡し、兄弟姉妹にも直系卑属はない。昭和三八年三月二二日相続財産管理人三木三郎が選任され(同年四月一〇日公告)、同年六月二六日相続債権者受遺者への請求申出催告の公告(同年八月二六日公告期間満了)、同年九月一八日相続人捜索の公告(昭和三九年四月二二日公告期間満了)がそれぞれなされたが、相続人、相続債権者、受遺者の申出はなかつた。

被相続人の遺産は主文掲記の宅地ならびに家屋であつて、昭和三八年一一月八日付許可の審判により、相続財産管理人はこれを換価し、換価代金は金二四〇万円である。

申立人は被相続人の亡妻きよの妹であつて、明治四四年に神戸市在住のドイツ人技師ハンス・ギンベラード・ゲイツケルと結婚(昭和六年六月二六日婚姻届出)し、昭和三五年一〇月四日夫と死別した。

被相続人は自宅を真言宗醍醐派末寺として不動尊を祭り、近隣の信者から奉納される賽銭や供物によつて生活していたが、その生活は苦しい方であつた。申立人方は裕福な生活をしていたので、申立人はきよの結婚一年後の昭和一四年頃から継続して毎月一回位金銭や衣類、米などを仕送りし被相続人方の生活を援助してきた。主文掲記の家屋ははじめ被相続人が賃借していたものであつたが、昭和三一年に所有者が租税を滞納したため、宅地とともに差押、公売に付され、被相続人が買受けることになつたのであるが、買受代金のうち相当部分を申立人が支弁した。もんは昭和三三年五月六日死亡し、その後被相続人方の家事手伝として三宅某を雇入れたがその賃金も申立人において支給してきた。

以上のとおりであつて、これらの事実に照らして考えると、申立人は被相続人の生存中その生活を事実上扶助してきた者として被相続人と特別の縁故があつた者と認められ、被相続人の相続財産の換価金のうちから、相続財産管理の費用金一、一〇〇円ならびに相続財産管理人に対する報酬金二四万円を控除した残額金二一五万八九〇〇円の全部を申立人に対して与えるのが相当であると認められる。

よつて相続財産管理人三木三郎の意見を聴いたうえ、主文のとおり審判する。

(家事審判官 入江教夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例